概要
家庭とは、複数人で同時進行する共同生活である。
食事を作る。
子どもを風呂に入れる。
寝かしつける。
洗濯する。
翌日の準備をする。
しかし《家庭内ログアウト》の使用者は、
口論や不機嫌が発生すると、自分だけその共同生活から離脱する。
「ちょっと頭を冷やしてくる」
「今は話したくない」
「一人にして」
そう言い残し、家を出る。
あるいは家から出なくてもよい。
別室へ籠もる。
イヤホンをする。
寝室へ消える。
呼びかけに反応しなくなる。
身体は家庭内に存在していても、家庭運営上は不在となる。
よく見られるセリフ
「今は話したくない」
「頭冷やしてくる」
「一人にして」
「もう知らない」
「俺がいても意味ないでしょ」
「ママじゃないと無理なんだから」
「そっちでやって」
観察結果
《家庭内ログアウト》には、不思議な特徴がある。
使用者が離脱しても、家庭そのものは停止しない。
子どもは腹が減る。
眠くなる。
風呂にも入る。
明日の準備も必要になる。
そのため、使用者が放棄したタスクは自然消滅せず、
その場に残っている者へ移動する。
使用者本人には「少し離れているだけ」という認識でも、残された側から見ると、
育児
家事
未解決の会話
相手の機嫌の処理
がまとめて追加される。
実質的には、家庭内負担の一方的な転送である。
得意なこと
口論から退場する。
不快な会話を中断する。
自分の感情整理時間を確保する。
育児や家事のピーク時間帯から姿を消す。
「冷静になるため」という理由を使い、自身の離脱を正当化する。
家庭内にいながら、家庭運営上のみ不在になる。
苦手なこと
離脱中も子どもの世話が必要であるという事実。
相手にも一人になる権利がある状況。
「じゃあ今度は私が一人になるね」と同条件を提示されること。
自分の離脱によって、相手側の負担が増えていると指摘されること。
戻ってきた後に、未処理タスクが保存されていること。
発動条件
自分の感情調整を、家庭内の共同責任より優先すると発動しやすい。
特に、
「怒っている時は仕方ない」
「自分が落ち着くまで関わらない方がいい」
「相手が対応できるから問題ない」
という認識がある場合、長時間ログアウトへ移行することがある。
乳幼児のいる家庭では、ログアウト中のタスク転送量が大幅に増加する。
長期使用による副作用
長期間使用すると、単なる家事負担だけでは済まない。
子どもは、
困った時に誰が来るか
眠い時に誰がいるか
怖い時に誰が抱っこするか
を日々学習している。
寝かしつけや泣いている場面から繰り返しログアウトすると、
使用者と子どもの関係性にも差が生じる。
やがて、
「ママがいい!」
などと言われるようになる場合がある。
この時、一部の使用者は
「ほら、ママじゃないと無理じゃん」
と判断し、さらにログアウト頻度を増やす。
こうして
関わらない
↓
愛着が育ちにくい
↓
選ばれなくなる
↓
さらに関わらない
という自己強化ループが形成される。
攻略メモ
クールダウンそのものは悪い行動ではない。
感情が高ぶった時に少し距離を取ることは、場合によっては有効である。
問題になるのは、距離を取る権利が一方にしか存在しない場合である。
「30分だけ離れる。その間お願い。戻ったら交代する」
であれば共同運営である。
一方、
「俺はもう無理だから消える。残りはよろしく」
では、単なるタスク放棄になる。
家庭はオンラインゲームではない。
ログアウトしても、世界は停止しない。
関連項目
地図メモ
王都住宅区・寝室棟・個室周辺で頻繁に観測される。
特に育児繁忙時間帯である夕刻から夜間にかけて発動率が上昇する。
使用者の身体が同じ建物内に存在している場合でも、
家庭運営上は「離席中」と判定されるため注意が必要である。
旅人が世界に託したひとしずくの力が、小瓶となりモラリアの地に届く。
量は問われない。小瓶はそっと物語の糧となり、時折、住人へ不思議な変化をもたらす。
