心の葛藤
覚悟を決めたつもりでも、
前日まではずっと迷っていた。
本当にこれでいいのか?
子どもを巻き込むことにならないか?
でも
あの家にこのまま居続けることの方が
もっと子どもを傷つけるんじゃないか?
決断の理由はいつも
私ではなく
子どもだった。
準備
実家には事前に相談していた。
家を出る前から
少しずつ荷物をまとめては車に運び込んだ。
でも、最後の最後まで
これが正解なのかは分からなかった。
一番の悩みは、長男にどう伝えるか。
お父さんと離れる
ということが、
どう響くのかが怖かった。
けれど、最近の彼の表情を思い出した。
食事のときに黙ってしまうこと、
わざと赤ちゃん返りするような仕草。
子どもでも、彼なりに感じ取っていたのだろう。
出発の朝
いつも通りの朝のふりをして、
子どもたちに朝食を作った。
保育園バッグに見せかけて、
子どもたちの着替えや
お気に入りのおもちゃを詰め込んだ。
心の中はぐちゃぐちゃだった。

わたし
あの人が帰ってくる前に出よう
出る直前に、
リビングのテーブルの上に短いメモを置いた。
「しばらく実家にいます。少し距離を置きましょう」
「冷静に話せるようになったら、連絡します」
一方的な言い方かもしれない。
でも、もうまともに話せる状態ではなかった。
外に出た空気
車に乗り込んで、家の前を出たとき、
急に涙が止まらなくなった。
ずっと堪えていた涙だった。
子どもたちは、
いつもと少し違う空気を感じ取ったのか
静かにしていた。
実家に着いたとき、
母が「おかえり」とだけ言ってくれた。
その瞬間、心から
やっと帰ってこれた
と思えた。
離れるという選択は、弱さじゃない
あなたがあなたを大事にするための
一番最初の勇気です。
「戻る場所」が一時的にでもあるなら
それは逃げではなく
自分を取り戻す第一歩。
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